2月23日付朝日歌壇の入選歌40首をお届けします。選者は永田和宏さん、馬場あき子さん、佐佐木幸綱さん、高野公彦さんです。☆は共選作です。
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永田和宏選
夕方を捨て切れない空へアクセル踏む小さくなった母おいていく(横浜市)清水 尚子
もし俺がいなくなったらと教えたがる事はひとつも聞きたくはない(佐渡市)藍原 秋子
爪楊枝刺して煙草を吸っている男らをもう見ない路地裏(観音寺市)篠原 俊則
あなたへの優しい言葉探してる掛ける私が楽になるため(高崎市)小出美恵子
キャタピラの轍(わだち)を深く残す道たどりて帰るガザの人びと(八尾市)水野 一也
大地震の波形の如き筆跡でトランプ大統領は次々と署名す(山口県)末広 正己
☆地震にて隆起をしたる岩場にて岩海苔を摘む能登の女性ら(石川県)瀧上 裕幸
根元から伐(き)られしサクラの切り株の隅に置かれしワンカップ酒(つくば市)山瀬佳代子
カバーより透けて見えにしゆうすげは清らに咲きて歌集の扉(水戸市)佐藤ひろみ
偶然にめまいの検査で見つかった「もやもや病」は脳に爆弾(東京都)阿部 藤子
【評】清水さん、施設に母を置いて帰るのだろうか。作者の心残りが上句に。藍原さん、死後のことを伝えたがる夫。そんなこと聞きたくないのに。篠原さん、いたよなあ、こんな男たち。十首目、モヤモヤ病の遺伝子は私の研究室で同定した。
馬場あき子選
スーダンを離れし後はガザへ…