3月30日付朝日歌壇の入選歌40首をお届けします。選者は馬場あき子さん、佐佐木幸綱さん、高野公彦さん、永田和宏さんです。☆は共選作です。
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馬場あき子選
クロッカスの群れ咲く庭を黒猫が花粉飛ばしつつ歩いて行けり(ドイツ)ハルツォーク洋子
やあコゲラみどり減りゆくこの町に再会できたり背のシマの白(習志野市)太宰 明子
大内宿(おおうちじゅく)の茅葺屋根に湯気たちて雪解しずくの音やまぬ春(仙台市)沼沢 修
☆雪降れば歓声あげて踊り出すヘルパーさんはフィリピンの人(京都市)中井冨士子
お前らも思へば遠くへ来たもんだノルウェーの鯖モーリタニアの蛸(松山市)宇和上 正
☆萌え近き高尾の山は静まりて緑啄木鳥(あをげら)のドラムときにこだます(東京都)上田 国博
「おかあさん」と教えたはずがいつの間に「ママ」と呼ばれてそれもしあわせ(大館市)柴田 陽子
山火事の迫り来るなか父親は入学の子のランドセル持つ(釜石市)若井 芳
古き家の宴のための椀の数行く先定まる子供食堂(矢板市)山田久美子
絹豆腐漆に練り込み猫の毛を描く伝統の蒔絵(まきえ)師の技(石川県)瀧上 裕幸
【評】第一首はクロッカスの群れ咲く庭に広さがみえ、花の花粉を体中につけた黒猫の堂々とした姿も春の陽気のおおらかさ。第二首の初句は楽しげな呼びかけ。コゲラは白黒の縞(しま)模様。まだ郊外の庭木にも来る。第四首、はじめての雪の感動。
◆馬場あき子さんの選歌は今回で終わります。
佐佐木幸綱選
ビルの狭間切り取られたる空…