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朝日歌壇選者の(左から)永田和宏さん、馬場あき子さん、佐佐木幸綱さん、高野公彦さん=東京都中央区、小林一茂撮影

 4月14日付朝日歌壇の入選歌40首をお届けします。選者は佐佐木幸綱さん、高野公彦さん、永田和宏さん、馬場あき子さんです。☆印は共選作です。

佐佐木幸綱選

☆スーパーへ買い出しに来るママチャリの力士見かけて大阪は春(吹田市)中村 玲子

 柔らかな春風ほわんと包み込み手編みのセーター簞笥にしまう(尼崎市)麻殖生容子

 昨日まで子のいた部屋を掃除する春風そっと通り過ぎゆく(東京都)渡辺 美香

 箱罠の中にてもがく猪の鈍き音する山坂登る(館山市)川名 房吉

 開発で里山の森がなくなって住宅の屋根でフクロウが鳴く(出雲市)塩田 直也

 保育士の妻は園児に囲まれて大黒頭巾とちゃんちゃんこ着る(戸田市)蜂巣 幸彦

 車椅子の父と父似の我だけがエレベーターの鏡に映る(新潟市)古川 範子

 来年はひろい視界で見えますよサクラ並木を行く教習車(南魚沼市)木村  圭

 引き出しの中にごろごろ消しゴムで消したい物など何もないのに(新潟市)野澤 千恵

 子のなきが母となりきり菜を刻むこども食堂夕焼け小焼け(東京都)新沢しんこ

 【評】第一首、大阪場所が開催される春三月ならではの風景。どことなくユーモラスなのが嬉(うれ)しい。第二首、そろそろ冬物の衣類をしまう季節。上句、軽々とした表現に注目。第三首、就学または就職で家を出たのだろう。場面の取り方がうまい。

高野公彦選

 福井まで新幹線の延びた日に…

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