5月25日付朝日歌壇の入選歌40首をお届けします。選者は高野公彦さん、永田和宏さん、川野里子さん、佐佐木幸綱さんです。☆は共選作です。
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高野公彦選
麗らかや昭和と共に歩み来て迎へる百年百歳の春(茨城県)渡辺たかし
北国に桜前線到れりとニュースは伝ふ平和を伝ふ(横浜市)山田 信子
すぐ「回天」脳裏掠(かす)める日曜のニュースで笑みて言ふ「魚雷バット」(京都市)森谷 弘志
一日に東奔西走20キロ自転車に乗り走るケアマネ(横浜市)太田 克宏
除染して土入れ替えた菜園に蜜蜂が来ず実らぬ苺(福島市)亀岡 広子
風景と風土の違い教わりぬ馬場あき子さん退任イベント(奈良市)山添 聖子
関税も停戦案も揺れ動く真の理念を持たぬトランプ(観音寺市)篠原 俊則
血圧値心拍体温範囲内九十五歳深深呼吸(周南市)松本 茂
渓流の解禁四月一日の残雪に見し熊の足跡(五所川原市)戸沢大二郎
三年生最初の茶道部へ行く朝にかばんに入れる白いくつ下(奈良市)山添 葵
【評】1首目、今年百歳の人はまさに昭和と共に歩んだ人。感無量の人生だろう。2首目、桜前線北上のニュースは、すなわち平和のニュース。3首目、魚雷バット→人間魚雷→回天、という連想。4首目、ケアマネの仕事の苛酷(かこく)さが伝わる。
永田和宏選
キャンパスにひがな鋸(のこ…