朝日俳壇の4選者。左から永田和宏さん、佐佐木幸綱さん、川野里子さん、高野公彦さん=2025年3月7日午後0時7分、東京都中央区、杜宇萱撮影

 5月25日付朝日歌壇の入選歌40首をお届けします。選者は高野公彦さん、永田和宏さん、川野里子さん、佐佐木幸綱さんです。☆は共選作です。

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高野公彦選

 麗らかや昭和と共に歩み来て迎へる百年百歳の春(茨城県)渡辺たかし

 北国に桜前線到れりとニュースは伝ふ平和を伝ふ(横浜市)山田 信子

 すぐ「回天」脳裏掠(かす)める日曜のニュースで笑みて言ふ「魚雷バット」(京都市)森谷 弘志

 一日に東奔西走20キロ自転車に乗り走るケアマネ(横浜市)太田 克宏

 除染して土入れ替えた菜園に蜜蜂が来ず実らぬ苺(福島市)亀岡 広子

 風景と風土の違い教わりぬ馬場あき子さん退任イベント(奈良市)山添 聖子

 関税も停戦案も揺れ動く真の理念を持たぬトランプ(観音寺市)篠原 俊則

 血圧値心拍体温範囲内九十五歳深深呼吸(周南市)松本  茂

 渓流の解禁四月一日の残雪に見し熊の足跡(五所川原市)戸沢大二郎

 三年生最初の茶道部へ行く朝にかばんに入れる白いくつ下(奈良市)山添  葵

 【評】1首目、今年百歳の人はまさに昭和と共に歩んだ人。感無量の人生だろう。2首目、桜前線北上のニュースは、すなわち平和のニュース。3首目、魚雷バット→人間魚雷→回天、という連想。4首目、ケアマネの仕事の苛酷(かこく)さが伝わる。

永田和宏選

 キャンパスにひがな鋸(のこ…

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