朝日俳壇の4選者。左から永田和宏さん、佐佐木幸綱さん、川野里子さん、高野公彦さん=2025年3月7日午後0時7分、東京都中央区、杜宇萱撮影

 6月15日付朝日歌壇の入選歌40首をお届けします。選者は佐佐木幸綱さん、高野公彦さん、永田和宏さん、川野里子さんです。☆は共選作です。

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高野公彦選

 特大のスーツケースと異国語をかきわけ進むホテルのロビーは(横浜市)小川 美貴

 負け越しを知らないままに石川の輪島以来の横綱となる(東京都)椿  泰文

 大道(だいどう)のバナナのたたき売りのごと一発かまして下げる関税(東京都)上田 国博

☆小学生の真つ直ぐな瞳が見つめ居り「風通し」さるる原爆死没者名簿(鹿嶋市)大熊佳世子

☆人生の重石のごとし広辞苑第一版が書棚にありて(魚沼市)磯部  剛

 二日間キャットシッター頼まれて並んで相撲観戦をする(春日井市)神戸 豊子

 三輪山の裾野やさしく広がりて受診帰りの吾を迎える(奈良市)山添 聖子

 家出ネコ見つかったらし電柱のポスターの上「ありがとう」の文字(東京都)秋岡  昭

 疎遠なる姪の電話に京言葉少し混じりて優しき夕べ(橋本市)秋月 晶江

 タッチパネル任せてという友と来て居酒屋で頼むタラの芽の天ぷら(東京都)鹿野 文子

 【評】1首目、外国人観光客で溢(あふ)れている日本の縮図のようなホテルロビー。2首目、大の里の横綱昇進を心から祝う。3首目、あのT氏の言動への疑問、違和感。4首目、原爆で亡くなった多数の命に思いを馳(は)せている真剣な児童らの眼差(まなざ)し。

永田和宏選

 一人の子に親の記憶を残せず…

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