朝日俳壇の4選者。左から永田和宏さん、佐佐木幸綱さん、川野里子さん、高野公彦さん=2025年3月7日午後0時7分、東京都中央区、杜宇萱撮影

 6月29日付朝日歌壇の入選歌40首をお届けします。選者は川野里子さん、佐佐木幸綱さん、高野公彦さん、永田和宏さんです。☆は共選作です。

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川野里子選

 地下鉄の階段下から声がするあれは空爆から逃げた人々(石川県)瀧上 裕幸

 黙禱(もくとう)を終へて見上ぐる空の青わづかに吾は整へられて(神戸市)山本みさよ

 着いたあと日傘をとじて駅までの陽のぬくもりをくるんと仕舞う(和泉市)星田 美紀

 さあ今日もベッドで自己流体操して独りで生きる 見ててください(高松市)高崎 英子

 現実が仮想世界に見ゆる日々煙まさしくバチカンに立つ(藤沢市)大内 菅子

 交代のサイレン響きて朝六時吾はやうやう人に戻りぬ(須賀川市)伊東 伸也

 今もなお箸の持ち方違ってる鍵っ子のまま大人になって(金沢市)竹内 一二

 趣味持たず仕事一筋亡き父の銭湯の下駄箱いつも3番(堺市)川口  伸

 戦死者の星印ある墓のめぐり除草剤撒くアメリカ製の(関市)武藤  修

 「クマ出ます。戸を閉めて下さい」山裾の食料品店に貼り紙がある(秋田市)高橋 りか

 【評】一首目、入ろうとする地下鉄に戦地の映像が重なってしまう。二首目、黙禱は生きている者のためなのか。五首目、ゆらぐ現実世界。新しい教皇が誕生した煙のリアリティーを嚙(か)みしめる。八首目、父はヒーロー長嶋を心に秘めていたのか。

佐佐木幸綱選

 早乙女(さおとめ)の衣装を…

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