朝日俳壇の4選者。左から永田和宏さん、佐佐木幸綱さん、川野里子さん、高野公彦さん=2025年3月7日午後0時7分、東京都中央区、杜宇萱撮影

 7月13日付朝日歌壇の入選歌40首をお届けします。選者は高野公彦さん、永田和宏さん、川野里子さん、佐佐木幸綱さんです。☆は共選作です。

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高野公彦選

 敵味方なく刻まれた平和の礎(いしじ) 摩文仁(まぶに)の海をともに眺める(甲州市)山下 栄子

 花のときも青実のときも寡黙なる枇杷(びわ)は束の間橙(とう)のともしび(千曲市)米澤 光人

 若きらの世は若きらが選ぶべし投票に行くをためらふ卒寿(東京都)上田 国博

 物価高あっても戦争出てこない五十年前のサザエさんには(宇都宮市)生沼 牧子

 憲法を知るや知らずや防衛費大幅増を米突き付ける(一関市)奥山与惣美

 大粒は孫に送りて規格外のさくらんぼ食む山形人(びと)は(仙台市)沼沢  修

 アトピーの母の遺影はガーゼもてゆっくりと拭くあの頃のごと(中津市)瀬口 美子

 先端の観測機器に席ゆずり百葉箱は芝にたたずむ(札幌市)田巻 成男

 「暑いから今日のプールは中止です」令和の子には順接の事由(柏市)伊藤 智紗

 月単位の命まわりに見守られ一歳二ケ月自ら歩む(平塚市)青木 良子

 【評】1首目、敵味方の区別なく沖縄戦の戦死者約24万人の名が刻まれた平和の礎は、まさに平和への祈りそのもの。2首目、「橙のともしび」という言葉が、美しく熟れた枇杷の実を浮かび上がらせる。3首目、こういう考え方の高齢者もいる。

永田和宏選

 テレビからアヒルのような濁…

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