7月27日付朝日歌壇の入選歌40首をお届けします。選者は川野里子さん、佐佐木幸綱さん、高野公彦さん、永田和宏さんです。☆は共選作です。
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川野里子選
☆よく見ればほんとは怖いパンダの目日本のことしかと見ていた(つくば市)小林 浦波
五時間目剣道の面はずすときおでこと首に七月の風(奈良市)山添 葵
ビルの谷の曇天を指し「空はここ」と言ってるようなパーキングの〈空〉(横浜市)森 明子
ベッドより車椅子にわれを移し終え腰をさするをひそかに見たり(北本市)横田 静枝
泣きながらエレベーターに乗りし子の泣き声下へ下へと向かう(長崎市)牧野 弘志
敗戦後市場(いち)に見つけた饂飩玉(うどんだま)光る白さに泣けたと亡き母(西宮市)坂本 栄子
猛暑日の字面を見れば〈熱気〉さえ突進してくる熊のごと見ゆ(盛岡市)内藤 賢一
☆島民が地震のさまを語るときアカショウビンのこゑ重なりぬ(富田林市)芝田 敦
こっちには戻る気はないと言う息子旅人のように富士を撮りたり(富士市)中馬 裕江
死んでいるトカゲの尻尾失せていて逃げきれなかった踏んばった四肢(広島県)吉田 順子
【評】一首目、帰って行ったパンダの真っ直(す)ぐな目は怖いほど真実の見える目だったのかも。二首目、心も防具を外して風を感じる。三首目、ビルの谷間の駐車場も「空(そら)」が恋しいのだ。四首目、介護の大変さを介護されながら見る辛(つら)さ。
佐佐木幸綱選
ひび割れの田に水入れてよみ…