8月10日付朝日歌壇の入選歌40首をお届けします。選者は高野公彦さん、永田和宏さん、川野里子さん、佐佐木幸綱さんです。☆は共選作です。
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高野公彦選
そうだった今日という日は人生で一番老いて一番若い(亀岡市)俣野 右内
ペンギンとゴリラ歩きを言いあって八十代が笑って元気(高槻市)田中由紀子
人相の違いにまどう目の前の候補者の貌ポスターの顔(仙台市)沼沢 修
強引に袖ひきシルバー席ゆずる年嵩(としかさ)われと変わらぬ古老が(吹田市)鈴木 基充
時を戻す魔法はやっぱり笑顔だね疎遠の友との待ち合わせで知る(東京都)上田 結香
ポストまで歌投函の二十分が夫の介護の息抜きの刻(下野市)若島 安子
14年経ちてようやく草刈りのできし学校福島にあり(京田辺市)大島 智雄
宅地化の進むこの丘その昔しし座流星群を観たよね(船橋市)梅本 咲子
☆養蚕を継がざりしわれに遺されて広き畑はコスモスの花(安中市)岡本千恵子
次の青待ちて渡るをならひとす置いてけぼりも楽しむ余生(横浜市)丸岡 良雄
【評】1首目、過去から見ると今日の自分は一番老いており、未来から見ると一番若い、という捉え方の面白さ。7月13日付掲載の久保塚文子さんの作に応えた歌か。2首目、お互いのペンギン歩きとゴリラ歩きを言い合って笑う元気な八十代。
永田和宏選
真夏日もヒジャブまとひて工…