8月11日付朝日歌壇の入選歌40首をお届けします。選者は佐佐木幸綱さん、高野公彦さん、永田和宏さん、馬場あき子さんです。
※18日付は休載し、次回は25日です。
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佐佐木幸綱選
放哉(ほうさい)の逝きたる島の夕暮に銀竜草の白き花咲く(高松市)島田 章平
燗酒は新婚二日の途中まで遅いと怒って四十年冷や(焼津市)増田謙一郎
居場所なき人の居場所の図書館に淡きひかりがさしこんでゐる(西条市)村上 敏之
同窓会で変わらぬ苗字は二人だけ結婚も改姓もあたりまえだった(東京都)上田 結香
自らが外来種とは知らぬ顔アカミミガメは蓮の葉の上(水戸市)加藤 慶子
弟は川探検に姉は田へ草引きにゆく自然学習(高知県)原 真由美
蟻を見て逃げる孫あり反対に蛇つかむ孫いる夏休み(松阪市)小野多美子
八ケ岳大夕焼に照らされて甲斐も信濃も今真夏なり(東京都)松木 長勝
ミサイルを撃たれし病院次つぎと白衣の医師が瓦礫を運ぶ(観音寺市)篠原 俊則
意地悪な看護師は無視のおじいちゃんボケても分かる人の良し悪し(福井市)佐々木祐香子
【評】第一首、俳人・尾崎放哉は大正十五(一九二六)年四月、小豆島で数え年四十二歳で他界した。第二首、新婚二日目に「お燗(かん)が遅い!」と怒ってしまったのだ。「途中まで」が、なんとも可笑(おか)しい。第三首、「居場所なき人の居場所」がポイント。
高野公彦選
遊船のときどきよぎる沖遠く…