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朝日俳壇の4選者。左から永田和宏さん、佐佐木幸綱さん、川野里子さん、高野公彦さん=2025年3月7日午後0時7分、東京都中央区、杜宇萱撮影

 8月3日付朝日歌壇の入選歌40首をお届けします。選者は佐佐木幸綱さん、高野公彦さん、永田和宏さん、川野里子さんです。

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佐佐木幸綱選

 隣人の逝去も知らず酷暑生くなんと寂しきマンション暮し(長崎市)西島  妙

 炎昼にボートを頭上に乗せ歩くシングルスカルの女子高生は(長岡市)柳村 光寛

 それぞれの生活圏は不明瞭人にも命熊にも命(札幌市)伊藤  哲

 休刊日何だかさみし朝採れの野菜包みし新聞を読む(三重県)片岡 景子

 手術後はゴジラ歩きと心得よ医師のビームは不安をも溶かす(京都市)奥田佳代子

 ビバルディもピアソラもさて何思ふ春夏夏秋冬(しゅんかかしゅうとう)五季のこの国(東京都)福島 隆史

 サックスは楽器であること忘れしか棚に置かれしままに七回忌(川崎市)新井美千代

 島からは離れられない地震(ない)の日々牛飼う人に仔牛近寄る(各務原市)可児 千浪

 抱っこして鉄棒さわる時すぎて己の力を試す孫なり(東京都)池神 玲子

 三十一歳三十一号大谷を三十一文字に詠める喜び(観音寺市)篠原 俊則

 【評】第一首、人間関係の薄いマンションの現在を「なんと寂しき」とうたう。時代の流れで仕方ないのか。第二首、「シングルスカル」とは一人で漕(こ)ぐボート種目。ここは、地上でボートを運んでいる場面、場面の取り方に注目。

高野公彦選

 八十年経ても収骨叶はざる春…

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