朝日俳壇の4選者。左から永田和宏さん、佐佐木幸綱さん、川野里子さん、高野公彦さん=2025年3月7日午後0時7分、東京都中央区、杜宇萱撮影

 8月31日付朝日歌壇の入選歌40首をお届けします。選者は川野里子さん、佐佐木幸綱さん、高野公彦さん、永田和宏さんです。☆は共選作です。

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川野里子選

 逝きますと言うごと母の喉(のど)が動きゆっくり止まるをじっと見ていた(佐世保市)近藤 福代

☆「生きるため死体の上を歩いたの」 ばあちゃんと僕が出会えた理由(筑後市)近藤 史紀

 阿弖流為(アテルイ)は己が足にて陸奥(みちのく)ゆ京まで歩きぬ首刎(は)ねらるるため(多摩市)豊間根則道

 伏せ鍬は座礼するやう立て鍬は黙禱(もくとう)するやう八月の昼は(焼津市)増田謙一郎

 蛸を買い料理する手に吸盤が命乞いかな吸いて離れず(東大阪市)志賀 克穀

 かたちよく亡き子の爪切りその母は通い慣れたる病棟を去る(三浦市)秦  孝浩

 三十六年楽しんだけれど同僚や生徒の自死ある世界でもあった(岡山市)山本 昌子

 裸子を五人あづかり怪獣の名をつけ放つ噴水の中(長野県)千葉 俊彦

 百点の答案用紙をざるにしきとりのからあげあげているママ(成田市)かとうゆみ

 親と会う朝に白髪をぬいておく髭は伸ばしたままにするけど(浜松市)尾内甲太郎

 【評】一首目、看取(みと)りとは全身全霊で見守ることなのだ。二首目、戦争の実感が世代を超えて伝わる。三首目、陸奥の「王」の矜持(きょうじ)が偲(しの)ばれる。四首目、鍬(くわ)も礼を尽くす原爆忌だ。九首目、本当は飾っておいて欲しかったのに、と見つめている。

佐佐木幸綱選

 丸ごとのスイカかかえて急ぐ…

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