8月4日付朝日歌壇の入選歌40首をお届けします。選者は馬場あき子さん、佐佐木幸綱さん、高野公彦さん、永田和宏さんです。☆は共選作です。
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馬場あき子選
地震M5の豊後(ぶんご)水道に飛び起きぬ伊方原発の不安残りぬ(大分市)大城伸一郎
胃カメラも大腸カメラも通りゆく人体といふ一本の管(八尾市)水野 一也
薄暗い広島原爆資料館子の握る手が熱くなりゆく(川崎市)小林 美佐
☆うなだれて相手チームの校歌聴くナインの肩に赤蜻蛉(とんぼ)とぶ(西条市)村上 敏之
毒ガス(イペリット)をつくった瀬戸の洞窟の壁の黒ずみ拭えぬ戦後(福島市)澤 正宏
野馬追いに十四年ぶり出た騎馬の帰り待つ町双葉のはなやぎ(福島市)青木 崇郎
春蚕(はるご)たたへ山水たたへ糸を取る琴糸となる鬱金(うこん)の撚(よ)り糸(津市)中山 道治
首里城の再建中のおみやげは墨のしるしのある鉋屑(かんなくず)(静岡県)末光 愛正
慎ましく気高く生きて嫌はれて蛞蝓(なめくじ)ひとり塩に溶けゆく(さいたま市)齋藤 紀子
ヘルメットの中に保冷剤入れてがんばれ真夏のママチャリ通勤(東京都)増田 麻美
【評】第一首は伊方原発に近い大分の人。M5の震源が豊後水道なら不安は一層だ。第二首は言えばその通りで、人間はまさに一本の管そのものである。第三首の原爆資料館での親子の体験。無言の感銘が伝わる手の温度。
佐佐木幸綱選
丁字橋の袂(たもと)の祖父…