9月1日付朝日歌壇の入選歌40首をお届けします。選者は永田和宏さん、馬場あき子さん、佐佐木幸綱さん、高野公彦さんです。☆は共選作です。
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永田和宏選
☆ひさびさに見る妹の左利き実家(いえ)売る書類に署名するとき(綾部市)出口真理子
室内の温度を下げるクーラーが外気の温度上げるを思う(相模原市)金澤 紀六
負けを知り悲鳴のごとき泣き声が響きたりけりパリの会場(横浜市)滝 妙子
こんな風に泣けたことなど自分には無かったと知る阿部詩を見て(さいたま市)齋藤 紀子
犬猫にそして金魚に日本語の名前をつけるみんな女の子(アメリカ)ソーラー泰子
配膳のロボット待てど人が来てすこしがつかり夏レストラン(北九州市)嶋津 裕子
死の姿孫に見せやることが祖父我の為しうる最後の仕事(観音寺市)篠原 俊則
名がついた頃はやさしい川だった鮭川鯉渕鮎浦鰍瀬(かじかせ)(北秋田市)高橋 充
☆「楽しみを老後にとっておいたバカ」バカな私は今を楽しむ(秋田市)柴田 敦子
心配する母とのん気な父の字は「母」は割り算「父」はかけ算(光市)松本 進
【評】出口さん、忘れていた妹の左利きを、実家を売るための署名で再発見。家族に流れた時間を思う。金澤さん、身を守るためクーラーをと繰り返されるが、地球はどうなるのだとも。三、四首目、今回もっとも強い印象を残したシーンの一つ。
馬場あき子選
☆炎天下に真冬の如く着膨れる…