9月15日付朝日歌壇の入選歌40首をお届けします。選者は佐佐木幸綱さん、高野公彦さん、永田和宏さん、馬場あき子さんです。☆は共選作です。
- 【投稿はこちら】朝日歌壇がネットからも投稿できるようになりました
- 【配信中】木下龍也さん×記者サロン「あなたのために詠む短歌ONLINE」
佐佐木幸綱選
車窓にはマッターホルンの迫り来て夏空を衝(つ)く岩峰険し(長崎県)稲垣 妙子
☆仕方なく吾に甘える声を出す妻の入院中の猫たち(村上市)鈴木 正芳
タレントと握手を交すに似たる獺(かわうそ)の指に触るるイベント(札幌市)伊藤 哲
多言語の行き交うパリの空港で「朝日歌壇」の日本に浸る(枚方市)小林 孝恵
この肉も心も過去で出来ている過去の絵の具で未来を描く(浦安市)中井 周防
敵にせず味方に取り込む方向で考えてゆくカラス対策(横浜市)友常 甘酢
こっそりと一人で行きたいまつたけ山鳴らすか悩む熊除けの鈴(弘前市)永井 一喜
四つ手網仕掛けし海のかなたより列車かけ来る 弓なりの湾(長崎市)秦 桂子
戦争を忘れ飢餓さえ忘れおり「お米育ちの豚」など食べて(水戸市)中原千絵子
満州を知らずに育ちし我なれど日本を知らぬ兄を忘れず(横浜市)白川 修
【評】第一首、スイス旅行の一首。夏空の青さとマッターホルンの対比の鮮明さ。第二首、猫は何匹いるのだろう。三匹か四匹と読むが、いかが。第三首、不思議なイベントがあるもの、と感心した。第十首、「兄」は満州で他界してしまったのだ。
高野公彦選
曲芸を競ふショー化の種目増…