9月29日付朝日歌壇の入選歌40首をお届けします。選者は永田和宏さん、馬場あき子さん、佐佐木幸綱さん、高野公彦さんです。
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永田和宏選
紀の郷の潮岬にたたずめば一八〇度われだけの海(東大阪市)池中 健一
買い置きし葉書にペタペタ二十二円切手を貼れりもうすぐ値上げ(深谷市)高木 昭子
都区内に二十四ある富士見坂いずれも富士山見えないという(蓮田市)斎藤 哲哉
みちのくの尾花沢はや秋づきて野辺のススキの穂波たつ見ゆ(仙台市)沼沢 修
フリルある日傘を差して亡き母が沖を見ている晩夏のバス停(垂水市)岩元 秀人
ニュアンスが標準語とはやや違うヒーロー大谷の喋る日本語(近江八幡市)寺下 吉則
「その電話使われてません」の案内にまた友一人と無言の別れ(志木市)小高美江子
比率から秋の深まり推しはかる窓に張りつく蛙と蝗(いなご)(南魚沼市)木村 圭
同窓会返信はがきの近況欄小さいような大きいような(熊本市)柳田 孝裕
帰り際手も合わせずに一度だけ鈴(りん)を叩いて次男は出てゆく(光市)松本 進
【評】池中さん、岬の端に立った時の実感。「一八〇度われだけの海」の端的な表現がいい。高木さん、朝日歌壇へ投稿のため買い置きしておいた葉書(はがき)だったのだろうか。大幅値上げに庶民の対応。斎藤さん、富士見坂の名にありし日の東京を。
馬場あき子選
三グラムすら取り出せずまだ…