体重を増やすため、娘は5カ月間、入院した(画像の一部を加工しています)=提供写真

患者を生きる・朝起きられない娘(前編)

 朝7時。東京都内の私立高校に通う娘(17)を、父(58)と母(58)が代わる代わる体を揺さぶって起こす。

 「ほら、時間だよ」

 娘は頑張って起きてくる日もあれば、再び横になってしまう日もある。起こされたことさえ、気づかない日もある。

 こんな日々が、7年近く続いている。

 娘が頭痛と微熱を訴え、学校を休むことが増えたのは小学3年生の終わりごろだった。

 41歳で授かったひとり娘。愛情たっぷりに育て、親からみても素直でいい子に育った。

 毎日楽しそうに学校に通っていたのに、なぜだろう。心配になった父は医師への説明も兼ね、起床や就寝時間、便通などの詳細をエクセルで記録し始めた。

 近所の病院では原因がわからず、東京医科大病院(東京都新宿区)の小児科・思春期科を頼ったのは4年生の6月だった。

 起きたときにめまいがする、倦怠(けんたい)感が続くといった症状から、医師は「起立性調節障害」を疑った。自律神経の乱れにより、立ち上がったときに脳への血流が下がることが原因だという。

 夏休みに1泊入院し、検査をして確定診断を受けた。寝た状態から立ち上がったときの心拍数が異常に高く、突然の血圧低下により失神しやすいことが確認できた。

 とくに特効薬はなく、規則正しい生活を送ることが大事だという。経過観察のため2カ月に1回程度、通院することになった。

 命にかかわる病気ではないとわかり、父はとりあえずホッとした。ただ、ストレスも影響するという説明がひっかかった。

 両親ともフルタイムの会社員。「娘を1人で家に置いておけない」と、ピアノと水泳の習い事に加え、4年生になってからは中学受験に向けた塾通いも始まっていた。

 嫌がっていた水泳と塾はやめ、近所の大学生に家庭教師をお願いすることにした。

 その後も娘の頭痛や微熱は続いたが、何とか学校には通っていた。

朝起きられない、食欲もない… やせ細る娘

 ところが、5年生に上がるこ…

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