「21世紀の朝鮮通信使」としてソウルの景福宮を出発した日韓の「友情ウオーク」の参加者ら=2025年3月9日、貝瀬秋彦撮影

 江戸時代に朝鮮王朝が日本に派遣した外交使節団「朝鮮通信使」の足跡を日韓の市民らがたどる「21世紀の朝鮮通信使 ソウル―東京 友情ウオーク」(日本ウオーキング協会、韓国体育振興会など主催、朝日新聞社など後援)が9日、ソウルにある朝鮮王朝時代の王宮・景福宮を出発した。ゆかりの地をめぐりながら、53日間かけて4月30日にゴールの東京に到着する予定だ。

 江戸時代の朝鮮通信使は1607年から約200年の間に日本に12回にわたり派遣された。往来の際に立ち寄った先で様々な交流が生まれ、「善隣友好」の象徴ともなった。

 今回の一行は、ソウルから安東や慶州などを経て釜山まで歩き、船で対馬や壱岐を経て福岡に向かう。バスで広島などに寄ったあと大阪に行き、再び東京に向けて歩く。すべての行程に参加する人もいれば、一部の区間だけに参加する人もいる。

 当時の道のりをたどる「友情ウオーク」は第1回の通信使派遣から400年となる2007年に始まり、新型コロナが広がった時期を除いて2年ごとに開催されてきたが、参加者の高齢化などもあって今回が最後になるという。

 9日は日韓の数十人が歩き始めた。最高齢は大阪市に住む在日1世の金承南(キムスンナム)さん(91)で、4回目の参加となる。「韓国と日本の参加者が友好を重んじ、心を一つにして歩くことが最大の喜び」だという。

 ソウル在住の許光道(ホクァンド)さん(65)は知人のつてでこの催しを知り、初めて参加した。「韓国と日本の関係はいろいろとあるが、互いに信じ合って助け合うのがいい。朝鮮通信使はその象徴だと思う」と話した。

 日本からの参加者の代表を務める遠藤靖夫さん(82)によると、今年が日韓国交正常化から60周年の節目ということもあり、区切りをつけることにした。今後は、ソウルから東京への道を「平和の道、友情の道」として日韓の若者らに歩いてもらう催しができないか、構想中だという。

 第1回から参加する大阪市の在日2世の李恵美子(リヘミジャ)さん(74)は「このつながりは終わりではない。別の形で今後も交流が続いていくと思う」と話した。

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