木彫り熊の第1号が誕生して100年を迎えた北海道八雲町で31日、そのルーツのスイスから届いた「ゆかりの品」の贈呈式があった。八雲とスイスとのつながりを復活させた立役者の鈴木譲さん(83)と、スイス・ブリエンツで1835年創業の工芸品工房を営むフラビウス・ジョバンさん(56)に対し、町から感謝状が贈られた。
- スイスからやってきた木彫り熊 殿様と住民の思いつながった100年
八雲町の木彫り熊第1号は100年前の1924(大正13)年、尾張徳川家の19代当主徳川義親が旅行先のスイスで購入した木彫り熊を手本に作られた。今回ジョバンさんから贈られたのは、約100年前に使われていた木彫り熊などの工芸品を入れるショーケースの木箱(長さ76センチ、幅60センチ、高さ68センチ、空の状態で22キロ)。販売員は木箱に商品見本を入れて欧州中を回り、注文を取っていたという。
この日の贈呈式の後、ジョバンさんはブリエンツでの木彫り産業の歴史を紹介。100年以上前にできた木彫りの技術を学ぶ学校が今もあることに触れ、これからの交流について「スイスの学生たちに八雲で木彫りの技術を学ばせたい。八雲の作り手にもスイスに来てもらいたい」と期待を込めた。
長く町商工会長を務めた鈴木さんは2011年、町に木彫り熊を見に来たジョバンさんを案内した縁でブリエンツを訪問。ジョバンさんが運営にかかわる「スイス木彫り博物館」で同型の木箱を見せてもらい、「木彫り熊の制作・販売で町民を豊かにしようと考えた義親がこの木箱のことを知ったら、販売に役立てようと考えたに違いない」と直感した。
ジョバンさんが木箱を贈るという約束を果たしたことについて、鈴木さんは「感慨無量だよ」と相好を崩していた。
木箱は鈴木さんから町に寄贈され、町木彫り熊資料館で展示される。(野田一郎)