大阪・関西万博の開幕に合わせて国宝を集めた展覧会が相次いだ関西で、アンチテーゼとも取れる異色の展覧会が開かれている。大阪中之島美術館(大阪市北区)の「日本美術の鉱脈展 未来の国宝を探せ!」。手堅い集客のために知名度が高いものを集めるのではなく、あえて知名度の低いものから魅力的なものを選(え)りすぐったという。
「国宝展が終わったから、次の国宝となる作品をこの展覧会の中から探してということではないんです。従来の国宝を支えている視点に匹敵するような新たな視点をここで提起したい。それが美術館の大きな役割だと考えています」。開幕前日の記者会見で、菅谷富夫館長は展覧会の趣旨についてこう話した。
監修したのは、美術史家で明治学院大教授の山下裕二さん。展覧会の企画や執筆活動を通じて、専門の室町時代の水墨画だけでなく、幅広い時代の日本美術の魅力を伝えてきた。
山下さんが「私にとって、この展覧会で最も重要な鉱脈の一つ」と話す作品が、牧島如鳩(にょきゅう)の「魚籃(ぎょらん)観音像」(1952年)だ。もともとは福島・小名浜漁協の組合長室に掛けられていた油彩画で、イワシの大漁祈願のために描かれた。
牧島はハリストス正教会の伝…