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「100年をたどる旅」沖縄編 インタビュー

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「100年をたどる旅」インタビュー 小川哲さん

 日本の国境にある沖縄は明治以降、国家の軍事的関心に翻弄(ほんろう)され続けてきた。今も、「地政学的に」「戦略的に」と防衛力強化が進む。ただ、そこに抜け落ちた視点があるのではないか。地図をテーマに国家と戦争、生きる人々の姿を描いた直木賞受賞作「地図と拳」の著者で作家の小川哲(さとし)さん(38)に、考えを聞いた。

 ――2月の朝日新聞への寄稿で、小川さんは「戦争は、そこに暮らす個人のミクロな生を、国家というマクロな生に置き換えることで遂行される」と書いています。

 戦後80年と、グーグルマップのサービス開始から20年になるのに合わせた寄稿依頼でした。「地図と拳」で僕は、日本が戦争のために作った満州国という傀儡(かいらい)国家のことを書きました。国家は地図を見て国の形を認識し、資源を求めて他国の土地を欲し、戦争を起こしてきた。そこで権力者が見ているのはマクロな地図です。一人ひとりの個人の生を見ていては、とてもじゃないけど戦争はできませんから。

 けれど、現代に生きる私たちはグーグルマップをピンチアウトして拡大すれば、他国でも家や畑、庭の自転車など、人々の営みを見ることができます。国家の意図に絡め取られないために私たちが出来るのは、視線をミクロまで落とし、一人ひとりの生を想像することだと考えました。

  • 【寄稿】グーグルマップ20年、「地図」が変えた人類 小川哲さん
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東京・新宿の夜景=1万3700メートル上空、朝日新聞社機から、林敏行撮影

 ――私は沖縄をイメージしました。確かに地図を見れば、中国と太平洋の境にあって台湾も近い。米軍基地が集中し自衛隊増強が進むのも、防衛上重要なのは理解します。ただ今の安全保障の議論で抜け落ちたものを、沖縄に住む記者として感じていました。

 国家が防衛や資源確保を考えるのは当然です。しかし80年前、私たちはあまりにもマクロなものの見方をし、ミクロなものを犠牲にしました。その反省から戦争を繰り返さないと誓い、戦後は共通認識となったはずです。しかし戦後80年がたち、国際情勢の変化を見ると、改めて個人の生を想起することが戦争をする国家にあらがうために大切なことだと思います。

歴史の分岐点を考える

 ――「地図と拳」では、個人の生も丁寧に描いています。

 第2次世界大戦で敗戦するま…

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