昨年4月に伊豆諸島東方の太平洋で海上自衛隊の哨戒ヘリコプター2機が墜落した事故で、海自は今月、水深約5500メートルの海底から2機の機体を引き揚げ、複数人の遺体を収容した。現在、身元の特定作業を進めている。
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費用は1千万ドル(約15億円)。事故原因はすでに特定されているにもかかわらず、海自が引き揚げにこだわった理由とは。
事故は昨年4月20日夜、潜水艦を探知する訓練中に2機が空中衝突して墜落した。搭乗員の1人は直後に収容されたが死亡し、残る7人は行方不明。海自は全員が死亡したと判断した。
事故直後から2機の機体は深海に沈み、海自の能力では探索できなかった。捜索活動に使うのは異例という海洋観測艦を投入し、7月になって位置を特定した。
だが、現場の水深は5500メートル。「5千メートル級は未知の領域。地上と月ぐらい離れている感覚だ」(海自幹部)と、当初は引き揚げるすべはないとみられていた。
事故調査はすでに終わり、両機のフライトデータレコーダーの解析や飛行航跡などから、見張り不足などが原因だったと結論づけられている。
昨年4月に起きた、海自ヘリ2機の墜落事故。機体は太平洋の深海に沈み、当初引き揚げは困難とみられていました。でも、自衛隊が機体を放置できないと考えたのには、二つの理由がありました。
海自幹部が意識した「メッセージ性」
それでも海自は、引き揚げの…