末期がんで休職している小学校教諭高島芳倫(よしのり)さん(51)=鹿児島市=が8日、鹿児島県出水市で音楽ライブに出演した。3時間で15曲を演奏し、宣告された「余命2年」を超えた生命力を示した。演奏の合間には、がんになって学んだことを通して「いのちの授業」を展開した。
1曲目の「スキップ・ビート」(KUWATA BAND)を歌い始めるとすぐにステージを下り、650人が集まった客席を回り始めた。教え子や保護者と握手しながら張りのある声でアップテンポの曲を歌い上げた。
- 「抗がん剤が効いても2年」の余命を超えて まっちょ先生が至った心境
2曲目の「希望の轍(わだち)」(サザンオールスターズ)を歌ってから、これまでの経緯と病状を告白した。
2022年1月に膵臓(すいぞう)がんが見つかり、23年3月には「余命は2年」と告げられた。抗がん剤がすべて効かなくなり治療を終了。「腫瘍(しゅよう)マーカーの値はなんと9万4千。正常は0~37なんですけど」
「今日は歌よりも話に重きを置きます」とがんになって気づいたことを語りかけた。
「健康なときからみんなは優しかった。がんになるまで優しさに気づけず感謝の気持ちを持たなかった」
休職して2人の子と遊ぶ機会が増えた。以前は片手間で遊んでいたように思う。「子どもと遊べる幸せに気づくことができないほど心が不健康だった。不幸せは、日常の中にある幸せに気づけない心でいること」
がんへの向き合い方も語った。
「治る確率が低すぎるがんを『直そう』と考え続けると、とてもつらい。がんも自分自身がつくったものだから敵対しない」
実は開演前から腹部に痛みがあり、演奏中に両わきばらがつったような痛みも加わった。「やり遂げたくても体が耐えられるのか不安があった」と振り返る。最後の曲「またあえる日まで」(ゆず)は観客と一緒に歌った。歌い終えるとひざから崩れ落ちて号泣した。