デビューから17年、大きな文学賞には縁がなかった。それがいきなり本屋大賞。岩手県花巻市在住の小説家、阿部暁子さんの受賞作「カフネ」(講談社)は昨年5月の刊行以来、発行部数が32万部に達している。
「書店員さんという読者の代表が、面白かったよ、と選んでくれた賞。無常の喜びです」
- 本屋大賞に阿部暁子さんの「カフネ」 料理と再生のストーリー
ずっと小説家になりたかった。きっかけは中学3年のとき。歴史の参考書で、源義経の最期の地が奥州・平泉と知った。同じ岩手県内ということもあり、妄想が膨らんだ。
高校に入ってすぐ、義経と兄・頼朝の物語を400字詰めの原稿用紙30枚くらいで書いたら、全国高等学校総合文化祭の文芸部門の末席に入選した。短い選評には「展開は安易であったが、筆者の筆力を感じた」とあった。真に受けた。
「楽観的な性格のせいか、前半は無視して、私って筆力あるんだ!と思って。思春期ならではの変な自信がむくむく湧いてきた」
その後も、総文祭に向けた小…