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東洋大姫路―西日本短大付 二回裏西日本短大付2死一、二塁、打席でバットを振る小川=内海日和撮影

 (17日、第107回全国高校野球選手権3回戦 東洋大姫路3―2西日本短大付)

 「まずは1点とろう」。2―3で迎えた九回裏2死一塁。主将の小川耕平選手(3年)はベンチから声を張り上げた。だが、最後の打者の打球は力なく上がり、中堅手のグラブに。「全国制覇」を本気で目指した夏が終わった瞬間だった。

 3万人の観衆で埋まった甲子園。ぼうぜんとしながら相手校の校歌を聞いていると、涙がほおを伝っていることに気付いた。現実なんだ――。涙が止まらなくなった。

 チームは昨夏、今春と3季連続で甲子園に出場。自身を含め昨夏の登録メンバーが9人残り、経験値の高い選手がそろっていた。ピンチの場面でも焦らない。1人1人が堅実にプレーする。そんな成熟したチームを体現する存在が、小川選手だった。

 自己主張の強い選手たちの話に真摯(しんし)に耳を傾けられる人間性、冷静に周囲を見られる視野の広さでチームを引っ張ってきた。「彼の言うことは部員全員が聞く」(1番打者の奥駿仁選手)、「落ち着いたプレーでチーム全体が締まる」(小川遥大記録員)などと選手たちの信頼も厚い。

 実家は福岡県みやま市内にある寺。中学時代は野球の練習の合間を縫って、月に一回は父と並んでお経を読んだ。「足がしびれるから正座は苦手だけど、集中力と落ち着きは少しは身についたのかな」と笑う。

 この日は2点を先取したが、五回に逆転される苦しい展開。それでも、焦らない。五回終了後のクーリングタイムでは「つないでいけば、絶対に勝機がある」と仲間たちに声をかけた。六回には自らも犠打を成功させ、好機を広げた。得点にはつながらなかったが、全員が地に足をつけた普段通りのプレーを全うして、最後まで相手を追い詰めた。

 わずか1点差の惜敗。小川選手は「精いっぱいやりきった」と言って続けた。「みんなで3季連続で甲子園に出られた。みんなとの日々はこれからも忘れないと思う」

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