【連載】フロントランナーの試練 欧州気候危機 第3回
気候変動対策のフロントランナーとして世界をリードしてきた欧州。記録的な熱波に加え、洪水や砂漠化、山火事などが相次ぎ、住民の暮らしを根底から揺るがしています。危機的な試練に直面する欧州の今を伝えます。
イタリアの首都ローマから約300キロ離れたサルデーニャ島。青い海と白砂のビーチに囲まれた地中海随一のリゾートは、再生可能エネルギーの導入で世界をリードしてきた欧州の光と影を象徴する島だ。
この島の「モンテ・アルチ」と呼ばれる山に広がる自然公園にはかつて、34基の風力発電機が並んでいた。2000年に完成した「プロペラ」は未来のエネルギーとして歓迎され、観光名所にもなった。
しかし、稼働したのはわずか1年。設置したローマに拠点を置く多国籍エネルギー企業は維持費をまかなえず、その後、22年まで放置された。
朽ち果てたブレード(羽根)は落下し、景観を損なう「迷惑施設」と化した。撤去が始まっても、地中深くに埋め込まれたコンクリートの基礎は完全には取り除けず、1メートルの盛り土で覆うしかなかった。
日本では、三菱商事が洋上風力計画からの撤退を表明し、生態系への懸念から各地でメガソーラー設置の見直しに直面しています。再生可能エネルギーの今後はどこへ向かうのか。記事の後半では、先進地・欧州がいま抱える課題を掘り下げます。
撤去に着手した地元のアレス…