世界的な半導体メーカー「台湾積体電路製造(TSMC)」の熊本進出が起爆剤となり、九州・山口の各自治体が半導体関連の投資を呼び込もうと躍起になっている。「シリコンアイランド」の復活なるか――。(添田樹紀)
「日本の半導体産業の復活のカギを握るのは佐賀なのかもしれない」
佐賀県が3月まで公開した特設サイトで、こう力説していたのは、人気漫画「島耕作シリーズ」の主人公・島耕作だった。
県は昨年11月、半導体産業を担当する副知事に、島耕作を任命する「異例の人事」を決めた。話題性を武器に関連企業の誘致を狙った。
佐賀にはすでに半導体基板材料のシリコンウェハー製造で世界シェア2位のSUMCO(東京都)が進出。最先端技術の開発を行う国立研究開発法人・産業技術総合研究所もあるという強みをアピールする。
さらに投資を呼び込むため、佐賀市と武雄市で計17.9ヘクタールの産業用地を造成する。有田町と唐津市でも計39.7ヘクタールを用地買収済みで、鳥栖市でも34ヘクタールの整備が予定されている。
吉野ケ里町に予定する22ヘクタールの産業用地は、SUMCOに約60億円で売却されることが決まった。伊万里市にある同社工場敷地内につくる新工場とあわせて投資額は2250億円と推計される。
県担当者は「半導体関連企業の誘致に重点を置いている。佐賀から世界に製品を供給するのは誇りだ」と話す。
TSMCの進出に沸く熊本県では、第1工場がある菊陽町周辺で人口が増え、住宅や商業施設の建設ラッシュが起きた。近隣の大津町は、商業地の上昇率が全国1位だ。同社の魏哲家・最高経営責任者は今月6日、視察に訪れた岸田文雄首相に、第2工場も菊陽町につくると伝えた。まさに「一人勝ち状態」だ。
熊本に追いつこうと、半導体関連の企業を誘致する動きは九州・山口の全体で激化している。
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