藤澤清造と並んで立つ西村賢太さんの墓(右)。台座には日本酒やたばこなどの供え物が置かれている=2025年5月14日午後0時12分、石川県七尾市小島町、椎木慎太郎撮影

 東京生まれの芥川賞作家は石川県七尾市の墓で眠っている。自身の経験をありのままに書いた西村賢太さん(1967~2022)。78歳年上の大正時代の作家に心酔し、月命日のたびに故郷の能登半島に通った。師と並んで立つ墓は2024年元日の地震で傷ついたが、墓前を訪れるファンたちに支えられている。

 JR七尾駅から徒歩15分の西光寺。境内には倒壊した灯籠(とうろう)、ブルーシートで覆われた墓が点在する。その一角に、西村さんの墓はある。日本酒、焼酎、たばこなどの供え物が台座を埋めている。

 西村さんは自身の姿を投影した北町貫多(きたまちかんた)が主人公の小説群を次々に発表した。貫多は日雇い労働の給料を酒や風俗につぎこみ、女性を殴り、家賃を滞納し、借りた金は返さない。西村さん自身は20代で2度、人を殴って逮捕された経験がある。

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