Smiley face
Paceギャラリー副社長の服部今日子さん
  • 写真・図版
  • 写真・図版
  • 写真・図版
  • 写真・図版

 ガゴシアン、ハウザー&ワース、デイビッド・ツヴィルナーと並んで世界4大メガギャラリーと呼ばれる「Pace(ペース)ギャラリー」が今年9月、東京・麻布台ヒルズに日本初のギャラリーを開く。Paceギャラリーの副社長としてPace東京を統括する服部今日子さんに、日本進出の狙いを聞いた。

コレクション文化はあるけれど

 ――アジアではすでにソウルと香港に常設ギャラリーを持つPaceギャラリーですが、日本へ進出する理由は

 まず背景から言うと、日本人にはコレクターとしての素地があります。戦国時代の武将が茶道具を集めたり、明治の数寄者(すきしゃ)がこぞって茶道具や東洋のものをコレクションしたりといったことが、脈々と続いてきました。1970~80年代の好景気の時代には、日本人がアートプレーヤーとして世界で主要な地位を占めていました。

 60年にアーニー・グリムシャーによって設立されたPaceギャラリーは、早い段階から日本とも取引があり、日本にコレクターがいることも、コレクション文化があることもわかっていました。ただ、国際的なギャラリーだけが存在していなかった。それが、Paceが今回、日本に進出する大きな理由です。

 (現在CEOを務める)2代目のマーク・グリムシャーは子供の頃から日本に来ていたこともあり、日本への思い入れが深く、文化を理解しています。日本の美術館にも作品を納めるなど深い関係を築いてきたので、ぜひ生かしていきたいと思っています。

 ――東京を拠点に、具体的には何をするのでしょうか

 日本には80年代から作品を買っているベテランコレクターがたくさんいますし、若手経営者などでアートに興味を持っている方も多いです。美術館も、最近ではポーラ美術館がフェリックス・ゴンザレス=トレスの作品を高額落札したように、アクティブな館もあります。

 素晴らしいアーティストもたくさんいます。弊社の取り扱い作家にも、奈良美智さんや名和晃平さん、チームラボ、日本を拠点にしている李禹煥(リウファン)さんがいます。その方たちを世界に売るのも、もちろん狙いのひとつです。

 世界における日本の相対的な地位は今、経済的にも人口の面でも下がっています。文化の面でも素晴らしいポテンシャルはあるのに、戦略的に生かしきれていないと思います。そこにPaceが入ることで、文化面での日本の国際的な地位向上に少しでも貢献したいなと考えています。

日本から奪うことはない

 ――今年5月、日本の戦後美術を代表する美術家のひとり、高松次郎の作品の取り扱いを開始したと発表しました。日本で海外作品を売ることと、日本の作品を世界で売ること、いずれかにより比重を置くのでしょうか

 グローバルな視点で優れた作家を世界中のコレクターに提供していくという考え方なので、両方重点的に取り組んでいきます。

 ――Paceの日本進出に対し、国内のギャラリーは作品の国外流出を懸念するのでは

 まず、首都の東京には国立の現代美術館がなく、そもそも現代作品の受け皿がないのが東京の現状です。

 また、ギャラリーに警戒され…

共有
© 2024 Japan Today. 無断転載を禁じます。