宮城県栗原市の東北道で2023年5月、停車中のバスにトラックが追突し、留学生ら3人が死亡した事故で、国の事業用自動車事故調査委員会は4日、報告書を公表した。事故前1カ月間のトラック運転手の男性の勤務が、運転・休息の時間を国が定める「改善基準告示」を大幅に超え、「日常的に疲労が蓄積され、前方への注意力が低下していた」と指摘した。
事故は23年5月16日午後8時すぎに発生。アルバイト先の工場に向かう留学生40人を乗せたバスがエンジントラブルで路肩付近の走行車線に停車し、降車してバスの後ろにいた運転手の女性(当時56)、当時27歳と同21歳の男性留学生2人がトラックにはねられて死亡した。トラックを運転していた「八洲陸運」(青森県)社員の男性(当時30)も全身に大けがを負った。
報告書によると、トラック運転手の男性は車線変更のため右後方の車を気にしており、「バスに全く気がつかなかった」と説明。男性の事故前1カ月間の勤務状況は、1日の拘束時間(上限値16時間)で13件、連続運転時間(同4時間)で18件が改善基準告示を超えていた。
一方で、バスはエンジントラブルで急激に減速したため路側帯ではなく走行車線に停車。運転手の女性はハザードランプは点灯させていたが、発炎筒や停止表示器材を後方に置いていなかった。
報告書はバスについて、「路肩に停車できなかったことが本事故につながった」と指摘。そのうえで、高速道路上で緊急停止した際は乗客をガードレール外側などの安全な場所に避難させる▽後続車両への自車両の存在が認識されやすくなるよう努める、などを再発防止策として挙げた。
事故をめぐっては、仙台地裁が昨年7月、トラック運転手の男性に対して「前方注視という最も基本的な義務に違反した」などとして、自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死)の罪で禁錮1年6カ月執行猶予4年の判決を言い渡している。