「勇気ある決断。繊細に、そして大胆に七対子(チートイツ)を決めました」
松ケ瀬隆弥が8ピンをツモり逆転した瞬間、実況の古橋崇志プロが叫んだ。
古橋プロは「これは松ケ瀬しかアガれないかもしれない」とも語り、解説の斎藤豪プロが「あそこで七対子に決めたのが見事すぎる」と続けた。
元Mリーガーの朝倉康心プロは「映像を見ておー、と声が出ましたね。いくつかの選択肢がある中で、七対子で行こうと決められる思い切りの良さが光っていた」と振り返る。
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場面は、風林火山・松ケ瀬、アベマズ・松本吉弘、パイレーツ・瑞原明奈、パイレーツ・仲林圭による7月15日のMトーナメントファイナルステージB卓第2試合、南4局4本場3巡目。
1試合目で2着、2試合目で3着目の松ケ瀬は、勝ち上がるために満貫ツモや仲林から6400点のロンアガリといった条件を突きつけられている。
配牌(はいぱい)でドラの5マン、3ソー、7ピン、白の四つのトイツがあった松ケ瀬。3巡目に2ピンも重なり、五つ目のトイツが出来た。ただ、手牌には5マンと白のトイツのほかに、3、3、4ソー、2、2、3ピン、6、7、7、8ピンとあり、横の伸びも期待できる状態だ。
実況の古橋プロからは「この巡目で、このリャンメンターツがあって七対子は嫌だ……」と、プレーヤー目線の声が漏れる。
だが松ケ瀬は20秒ほど場を見渡し、勢いよく6ピンを切った。この分岐点でメンツ手を崩し、七対子へ向かう合図だった。
この場面は、トイツ手とみるならば、七対子の1シャンテン(あと一つ有効牌を引くとテンパイの状態)、対々和(トイトイホー)の3シャンテン、メンツ手とみるならば2シャンテンとなる。
朝倉プロは「まず、ドラで真ん中の5マンや1枚切れの3ソー、白、7ピンを重ねるトイトイはかなり厳しい。通常であれば、七対子よりも受け入れの広いメンツ手の方がアガりやすい。でも、それだと満貫ツモ条件を満たすのが難しい」と解説する。
難しくしているのが、白と5マンのシャンポン部分。「白をポンして役をつけてもドラ2枚では打点が足りない。どちらかを自力で引いてもう片方を頭に固定すればスムーズだが、逆に言うとシャンポン部分を引いてこないと厳しい形」
そこで、メンツ手の見方を変えてみる。ドラを生かして白をトイツ落としするパターンだ。
「白を落としていくと感覚的には、実質3シャンテンのイメージ。ただ、リャンメンターツが多いのでほとんど好形が約束されていて、受け入れも広い3シャンテンのメンツ手。1シャンテンの七対子と比べると、スピードは同じくらいだと思う」と朝倉プロ。
そこで、どちらが良いかを二つの観点で検討する。
まず、ステージを突破するた…