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東京女子大の矢ケ崎紀子教授

 観光地のオーバーツーリズム問題は、早急に手立てを考えるべき課題だろう。同時に、日本が「観光立国」をめざすなら、日本の観光地が身につけてしまっている「待ちの姿勢」も、改めるべきポイントである、と東京女子大教授の矢ケ崎紀子さんはいう。

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 ――オーバーツーリズムの問題が度々報じられています。

 「確かに、京都や富士山のように一刻も早い手立てが必要な場所もあります。富士山の環境悪化や登山事故も心配ですが、とくに京都は市民生活への影響が切迫していると思います。インバウンドが2千万人を超える2016年ごろには、すでに京都の地元から『これ以上増えるのか?』という不安の声が上がっていました」

 「初めてイタリアに行けば、ローマ、フィレンツェ、ベネチア、ミラノを訪れたいように、首都、古都、商都は定番です。日本では東京、京都、大阪でしょうが、京都はほかの2都市に比べ、狭い地域の中に、世界文化遺産が多く集積し、魅力的な観光資源にあふれています。日本に初めてやってくる外国人旅行者だけでなく、京都に行きたい日本人旅行者も多いですから、早急に手立てをしないといけないと思います」

 ――オーバーツーリズム対策についてどうお考えですか。

 「原因と状況に応じて複合的な対策を講じ、改善状況を監視しながら、次の手を打っていくことだと思います。予防策も大事です」

 「注意しないといけないのは、インバウンド対策だけが、解決すべき観光の課題であるように思ってしまうことです。集中の問題を外国人観光客だけの問題にするような風潮があるとしたら心配です。オーバーツーリズムという言葉が使われる以前から起きていた問題もあります」

旅行会社が牽引した国内旅行ブーム

 ――日本は本当に「観光立国」をめざすべきなのでしょうか。

 「観光庁にいた09年ごろに…

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