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松山商―済美 十回表松山商、安永が適時打を放つ。三塁走者の小林と二塁走者の白石が生還し、2点勝ち越し=2025年7月29日午後0時43分、坊っちゃん、川村貴大撮影
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 (第107回全国高校野球選手権愛媛大会決勝、済美4―3松山商=延長十回タイブレーク) 

 同点で迎えた延長タイブレーク十回表2死二、三塁。松山商の安永弦生(げんき)主将(3年)が打席に立った。

 「ストレートしか(ヤマを)張ってなかった」

 真ん中に入った初球をたたきつけた打球は、相手投手の足に当たり左前に転がった。勝ち越しの2点適時打になった。「練習の成果が出せた」と一塁で人さし指を掲げた。

 その直後、「一つずつアウトをとっていこう」とみんなで確認した。脳裏には、春の県大会2回戦があった。西条を相手に4―4で延長タイブレークに入り、十回表に2点を取ったが、その裏に3点を奪われて逆転負けした。同じ轍(てつ)を踏まないという決意だった。

 緩みはないはずだったが十回裏、中犠飛で同点に追いつかれた。さらに2死一塁で、二盗を許した。そして途中出場の選手に初球を打たれ、サヨナラ負けした。

 「ツーアウトからでも盗塁を仕掛けてきた。相手の粘り強さに自分たちは耐えきれなかった」

 昨年のチームでは唯一の2年生レギュラー。第1シードだった昨夏と一転、ノーシードから勝ち上がっての24年ぶりの決勝進出だった。準々決勝を突破した時点で、強く意識し、仲間と鍛錬を重ねる原動力になっていた昨年の先輩たちを超えた。

 試合後は晴れやかな笑顔だった。

 「みんなが一つになれて戦えた。今日の試合は今までで一番のベストゲーム。後悔はないです」

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