「果てしなきスカーレット」 ⓒ2025 スタジオ地図

 「アニメーションの世界は自由です。何を作ってもいい。僕も自分がシェークスピアやダンテを基に作品を作るとは思っていなかった。可能性は無限大だと思います」

 6日まで開催されていた第82回ベネチア国際映画祭で、細田守監督の新作「果てしなきスカーレット」世界初上映に立ち会いました。エンドタイトルが始まると同時に、メイン会場を埋めた約1千人の観客から熱烈な拍手を歓声を浴びる監督はうれしそうでした。でも私の心は複雑……。

 愛する父アムレット王を叔父クローディアスに殺された王女スカーレットは復讐(ふくしゅう)を図るも失敗し、目覚めればそこは荒涼とした「死者の国」。クローディアスの一党もここに来ており「見果てぬ場所(つまり天国)に連れて行ってやる」と死者たちを扇動し、その一方でスカーレットに次々と刺客を放つ。そんなところに出くわしたのが、現代日本からワケも分からずやって来た看護師の聖(ひじり)。暗い怒りに燃え本懐を遂げんと猛進する非情な王女と、愚直なまでの使命感と博愛精神をもって復讐も戦いもやめさせようとする好青年は、苦難の旅を共にすることに――。

 「サマーウォーズ」以降の細田さんは自身のライフステージを作品に反映させ、青年の成長や子育てや大家族や親子関係を描いてきましたが、今回は本格的なファンタジーへグイッと舵(かじ)を切りました。ベースはシェークスピア「ハムレット」、テーマは復讐と赦(ゆる)し。我々はいかに復讐心を抑え「報復の連鎖」から抜け出すか、という極めて現代的なテーマを持った大きな構えの作品です。

 ベネチアでの公式記者会見で…

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