シュルシュルシュル――。昨年11月の夕、三方が玄界灘に面した埋め立て地に立つ福岡県立水産高校(同県福津市)の校舎裏手で、沢村将悟さん(17)が黙々と釣りざおを振っていた。「釣りは自分にとって、没頭できるもの。何も考えない、自由な時間なんです」
【連載】「母校 知っと~?」
あの高校の伝統行事や名物はどう受け継がれている? 令和の時代の学校生活とは? 福岡県内のスクールライフの「いま」を描きます。
沢村さんが立つのは、校舎裏にある船着き場。実習や部活で、船を出すための場所だ。
1986年に校舎が海沿いに移転したことを機に作られ、柴原誠・前教頭によると、少なくとも約20年前には生徒らの釣り場となっていたという。釣果を家に持ち帰って調理したり、学校の水槽で飼育したりしようと、多い日で10人ほどが集まる。学校沿岸の岩場が魚のすみかとなり、春はアオリイカ、秋はキスや小ぶりなマダイ、冬にはカワハギやカサゴ、メバルが主に釣れる。
集まるのは、釣りが得意な生徒ばかりではない。
「(1匹も釣れない)ボウズ…