2025年3月3日、米ニューヨークの国連本部で開かれた核兵器禁止条約(TPNW)の第3回締約国会議で演説後、日本の報道陣の質問に答える日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)事務局次長の浜住治郎さん=遠田寛生撮影

 核兵器禁止条約の第3回締約国会議が3日、米ニューヨークの国連本部で始まった。昨年ノーベル平和賞を受賞した日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)事務局次長の浜住治郎さん(79)が登壇。広島で胎内被爆したことを語り、原爆は「悪魔の兵器」だと訴えた。

 浜住さんは原爆で父親を失い、母親はそのとき妊娠3カ月だった。「母親のおなかで原爆を浴びた若い細胞にとって、放射線の影響は計り知れない」と話した。

 妊娠早期に母体が近距離被爆し、心身に障害を持って生まれた原爆小頭症被爆者にも言及。「悲劇を繰り返してはならない」と核兵器廃絶を訴え、「私たち被爆者はあきらめない。これからも原爆体験の証言の場で語り継いでいく」と述べた。

 核禁条約については「核兵器はいかなる意味でも違法だとした国際法が実現したことは大きな喜び」と話し、条約の国際的な広がりや、核被害者の援助や核実験・核開発で汚染された環境の回復に向けた「国際信託基金」などの議論が進むことを期待した。

 会議では浜住さんに先立ち、国連事務次長・軍縮担当上級代表の中満泉さんも演説。核兵器を巡る国際社会の緊張が高まっているとして、「予測不可能な状況が人々の恐怖心を悪化させ、核兵器が究極の安全保障をもたらすという誤った言説を信じる人が増えることを懸念している」と述べた。

 その上で「希望はある」と続け、「核兵器の壊滅的な人道的影響に対する世界的な認識は高まり続けている。日本被団協へのノーベル平和賞はその好例だ」と指摘。「彼らの何十年にも及ぶたゆまぬ活動は、核兵器のもたらす非人道的な苦しみへと注目を集めてきた」と話した。

 核兵器禁止条約 核兵器の開発や使用、使用の威嚇などを全面的に禁じる条約。現在、94カ国・地域が署名、73カ国・地域が批准しているが、米国やロシアなどの核保有国や「核の傘」の下にある日本は署名・批准していない。締約国会議には、同じく核の傘下にありながら「オブザーバー参加」する非批准国もあるが、日本は過去2回に続き今回もオブザーバー参加せず、被爆者らから批判の声が上がっている。

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