Smiley face

 子ども時代に受けた性暴力は、被害者の心に深い傷を刻み込み、ときに人生を壊すほどの深刻な影響を与え続けます。その心の傷を手当てし、影響をできるだけ小さくするために、何ができるのでしょうか。また、被害者のケアや治療にはどんな課題があるのでしょうか。約40年被害者に寄り添ってきた、兵庫県こころのケアセンターの副センター長で、精神科医の亀岡智美さんに聞きました。

 性暴力被害を受けると、心に大きなケガをした状態になります。「回復」の考え方は人それぞれですが、その心のケガを癒やしてその後の人生を前向きに生きていくことが、治療・ケアの目標とは言えると思います。

丁寧に聞いて、しっかり受け止める

 子どもが性被害を打ち明けたときは、できるだけ丁寧に聞いて、「よくぞ言ってくれた」としっかり受け止めることが大切です。開示のプロセスは一直線ではなく、ちょっと言ってみてちゅうちょしたり、行きつ戻りつしたりすることも珍しくありません。しかしそのときに、ウソつき呼ばわりしないで、まずは受け止めるということが大事です。

 特に子どもの場合に気をつけてほしいのは、あまり深く聞き過ぎないということ。自発的な語りは一通り聞いても、根掘り葉掘りほじくらない。被害があったことがわかったら、それで支援機関につないで下さい。

 根掘り葉掘り聞かれることは、大人の場合は「何回も聞かれて苦痛を感じる」という二次被害になりますが、子どもの場合はそれだけでなく、下手に聞くと、暗示を与えてしまうことになります。子どもは何回も聞かれると、自分の答えが間違っているのかと感じ、もっと別のことを言わなくてはいけないと思って、どんどん違う方向に話が進むことは珍しくありません。

 最初の対応を間違えると、何があったのかがわからなくなってしまいます。最初の情報が汚染されると、その後、どんなに上手に聞いたとしても、二度と事実がわからなくなり、取り返しがつきません。

子どもが話した言葉のままを記録

 もう一つ大事なのは、子ども…

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