入った瞬間、ほんのりと甘い香りがした。
九州最大級の桃の産地、福岡県うきは市の「道の駅うきは」。棚を埋めるのは、とれたての桃だ。農家が直接持ちこむから鮮度は抜群。朝から客が詰めかける。
扱う桃は約60種類。「1週間くらいでどんどん替わるんです。これだけたくさん種類のある産地はなかなかないんじゃないかと」。山平健二・総合企画部長は言う。
5月下旬、シーズン開始を告げるのは「ひめこなつ」。香りのよい「ちよまる」、ジューシーな「あかつき」、歯ざわりのよい「勘助(かんすけ)白桃」などが続く。7月下旬から8月は大玉の「川中島白桃」、マンゴーのように香る「黄金桃」などが堂々と終盤を飾る。
耳納連山のふもとにある千崎光洋さん(51)の桃園を訪ねた。父の恒夫さん(81)、母の寿美さんと収穫の真っ最中。ひとつずつ熟れ具合をみながら丁寧にもいでいく。よく色づいた実の前を通り過ぎたので尋ねると、「まだどことなく、ぎこちないでしょうが」と寿美さん。形について教えてくれたが記者には違いが分からなかった。
80年ほど前に恒夫さんの父…