右から映画「桐島です」に主演した毎熊克哉さん、監督の高橋伴明さん、脚本の梶原阿貴さん=2025年7月4日午後8時28分、東京都新宿区、森下香枝撮影

 連続企業爆破事件で指名手配され、約半世紀の逃亡の末、70歳で病死する直前に本名を名乗りでた桐島聡元容疑者の人生をモチーフにした映画「桐島です」が公開中だ。20歳から亡くなるまでの桐島役を演じた俳優の毎熊克哉さん(38)、監督の高橋伴明さん(76)、脚本を担当した梶原阿貴さん(52)の3人が作品について語り合った。

――桐島聡元容疑者(以下、桐島)が2024年1月29日に病死したことは大きなニュースになりました。すぐに映画化に動いたのですか。

高橋 本作を企画した小宮亜里さんから「あなたが撮るべきでしょう」とあおられて、その気になって準備をはじめ、何とか完成にこぎ着けました。よく間に合ったなと。

――3月、同じ桐島を主人公にした足立正生監督(86)の「逃走」が先に公開されました。足立監督も高橋監督も学生運動に身を投じ、「政治の季節」を経験しています。

高橋 実は若い頃、足立監督にパレスチナに一緒に行かないかと誘われ、断ったことがある。私は政治運動より映画を作りたかった。行かなくてよかったと思っています。

――足立監督はパレスチナにわたり、1974年には日本赤軍へと合流し、逮捕されたレバノンで3年の禁錮刑に服し、2000年に帰国。映画監督として復帰し、「逃走」を撮りました。

高橋 二つの映画の違いを見てもらえればと思います。私の方は桐島という男の青春時代から70歳で亡くなるまでを描き、単なる逃走劇ではない。人間的なやさしさがあるやつだったんだなと想像してもらえれば、ありがたい。この映画がどう評価されるのか不安もあります。桐島が属していた東アジア反日武装戦線の主張は史料があるのですが、彼についてはわからないことが多すぎる。今回はこうだとあえて言わないようにしています。

――梶原さんは高橋監督から5日で脚本の初稿を仕上げてほしいとオファーされたとか。

梶原 はい。「お前なら書けるだろう」「映画のタイトルは決まっている」と。でも監督にオファーされる以前から私は桐島にシンパシーがあり、情報を集め、事件のスクラップをしていました。

――梶原さんは映画公開と同時期に「爆弾犯の娘」という自叙伝を出版しています。その中で、梶原さんの父親もある爆破事件に関与し、指名手配され、14年にわたる逃亡の末、逮捕された経緯が描かれています。

梶原 子どもの頃に見た父の手配写真の隣に桐島が載っていました。この脚本は私にしか書けないと思い、5日で仕上げました。SNSや父の知り合いから桐島に関する情報を集めていました。住んでいた場所や立ち寄ったであろう現場などに取材に行ったら、足立監督と鉢合わせたりし、意識したりして(笑)。俳優だった父は出所後、足立監督の映画「テロリスト 幽閉者」に出演しています。

毎熊 梶原さんの本を読ませてもらいましたが、脚本とオーバーラップしました。映画では逃亡者のリアルが描かれています。

――桐島役のオファーがあった時、どう思いましたか?

梶原さんが脚本に込めた「やさしさを組織せよ」の意味は。ラストシーンに込めた高橋監督の思い、桐島を演じた毎熊さんの覚悟とは。3人が語り尽くします

毎熊 世間的に彼はテロリスト…

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