林業が盛んな鳥取県智頭町で、県立智頭農林高校の生徒と町立智頭小学校の児童が一緒に植樹を体験した。高校生が小学生にやさしく教え、苗木を1本ずつ丁寧に植えた。地域の自然と大切な産業を守り継ごうと、初めて企画された「小高連携」の取り組みだ。
「うわー、すべる!」
「足元、気をつけて。こっちが歩きやすいよ」
5月22日、智頭町市瀬にある智頭農林高の演習林に、小学生と高校生の声が重なり合った。
「森林教室」と名づけた実習に参加したのは、同高で林業を学ぶ森林科学科森林応用コースの3年生7人と、智頭小の5年生37人だ。マイクロバスなどでやって来た。
沢沿いの斜面はかつてススキの草原だったが、10年ほど前から砂利で覆われる裸地になった。一帯の植物をシカが食べ尽くしたためだ。緑を取り戻そうと、智頭農林高の生徒たちは2021年から、シカが食べたがらない植物を植えて育てる取り組みを始めた。
「木を植えて森林になるには100年以上かかります」「森林には山の中の水の量を調節したり、山崩れを防いだりする働きがあります」。植樹体験に先立ち、智頭農林高の小林徹教諭(61)が小学生に語りかけた。
樹木が土壌にしっかりと根を張っていないと、雨で表面の土が流されて裸地が広がり、土砂崩れによる災害も起こりやすくなる――。児童たちは真剣な表情で説明に耳を傾けた。
その後、高校生1人と小学生5~6人が1組になって山腹の急斜面へ。ウリハダカエデやエゴノキ、ゴマギ、ネジキなどの苗木を1本ずつ植え、自分の名前を書いた木札をくくりつけた。
最後は小学生から高校生への質問タイム。「森林の勉強は難しいですか?」「将来は木を切る人になるのですか?」。すっかり仲良くなった生徒と児童たちは、にぎやかに笑顔で言葉を交わし、約2時間の森林教室を終えた。
智頭農林高の田中煌己さん(17)は「小学生に教えるのは難しいかなと思ったけれど、楽しくできた」。町内出身の古田楓真さん(17)は「小学生のみんなにも智頭や林業のことを好きになってほしい」と話した。
智頭小の5年生は「総合的な学習の時間」で、地域の基幹産業の林業について学んでいる。地域社会を支える人材の育成を目指す智頭農林高は、「植樹体験を通じて林業の魅力を地域に広く伝えられれば」(小林教諭)との思いから初の合同実習が実現した。
小林教諭は「小学生に教えることで生徒自身の成長にもつながれば」と期待する。今後は高校生がチェーンソーで木材を切る実演をしたり、小学生に木工体験をしてもらったりすることを考えているという。(富田祥広)