■連載「在来作物はいま」受け継ぐ人たち(4)
6月下旬、山形県鶴岡市温海(あつみ)地区の、山の斜面を訪ねた。案内してくれたのは地元の温海町森林組合職員、忠鉢春香さん(44)だ。
2メートルおきに植えられた杉の苗木は、大きさ40~50センチ。まだ細くて頼りないが、みずみずしい新芽が生命力を感じさせる。苗木の間には、焼けた木の切り株が点在していた。
この地域では、古くから焼き畑農法で在来種のカブが作られてきた。「温海カブ」だ。皮は赤紫で中は白い、江戸時代から続く特産物。甘酢漬けにするとぱりっと歯ごたえがいい。当時から高値で取引されていたという記録もある。
杉を育てて伐採し、その跡地を焼き畑にして温海カブを栽培する。カブを収穫後、また新しく杉の苗を植える――。斜面に焼けた切り株が残るのは、ここで焼き畑が行われたためだ。
昨年12月に苗を植えてから半年あまり。「5センチくらい伸びました。火を入れたときに雑草も焼けたおかげで、草も少なくていいですね」。育ち具合を確かめながら、忠鉢さんは話した。
造林だけでなく、焼き畑でカブを栽培するのも温海町森林組合。杉の枝葉を焼く場所に並べ、炎天下の8月に火入れし、斜面で収穫する。重労働だ。
それなのになぜ、森林組合がわざわざカブ栽培に取り組むのか。
背景には、このままでは林業…