日本の植民地支配下を生きた朝鮮人らの声を、30年以上の時を経て復元した映画「よみがえる声」が公開されている。監督は、在日コリアンの親子。植民地支配や差別、戦争が人々になにをもたらすのかを問いかけている。
「胸が苦しくて、そのときのことは話せません」
スクリーンに映る韓国人の女性が、泣きながら言葉を絞り出す。1990年、朴壽南(パクスナム)監督(90)が在韓被爆者たちを取材で訪ね歩いていたときの様子だ。
女性は広島で被爆した。幼子を亡くし、後遺症で体からうみが出続けるという。嫁ぎ先から「追い出された」話を朴監督が振ると、女性は急に話せなくなった。「ごめんなさい。言いたいことがたくさんあるのに」
映画には、証言者が10人ほど登場する。朴監督は「日本でも、祖国でも差別される。つらさのあまり『沈黙させられた声』を記録してきました」と振り返る。
母を愛することを奪われ… アイデンティティーを取り戻す旅
朴監督は35年、三重県に生まれ、皇国少女として育った。「チョーセン」と石を投げられ、民族衣装姿の母と外出するのを嫌がるようになった。「母親を愛することを奪われた」
戦後、朝鮮学校を卒業し、6…