博物館で見た大昔の本には「チョコレート」という食べ物が……=「ミライチョコレート」(白泉社)から

 みんな大好きなチョコレート。でも、3024年の世界には存在しなかったとしたら……? チョコレートに魅せられた少女マヤの冒険を描くSF絵本「ミライチョコレート」を手がけた絵本作家兼美術家ユニット、ザ・キャビンカンパニーの2人に、誕生秘話を聞きました。

効率の先は「充電式」の食事?

 阿部健太朗さん この本は、株式会社明治とのコラボレーションで生まれました。チョコレートの成り立ちについての絵本を作りたいという提案が出版社にあり、作者として僕らが選ばれたのが始まりです。

 吉岡紗希さん その頃、ちょうど食べ物について考えていました。当時はコロナ禍初期で、スーパーへ行くにも息を止めて走っていくような状況でした。近所に暮らす自給自足の農家のお年寄りたちと違って、私たちはお店が使えないと明日の食事にも困ってしまう。すごく弱い存在だなと。

 阿部さん スーパーに行けば手羽先の6本入りパックが売られているけど、それがニワトリ3羽分だということは考えない。チョコレートも、カカオが遠いガーナやコートジボワールで栽培されていることもあり、成り立ちのわかりにくい食べ物です。単なるハウツーではなく、物語に落とし込めそうだと思いました。

 「ミライチョコレート」

白泉社、2024年、7千部。舞台は3024年のニッポン。少女マヤは博物館で知った「チョコレート」という昔の食べ物が食べたくなり、相棒の「フライごう」に乗って旅に出ます。チョコレートって何でできているの? まさか、なにかのうんちだったりして……。古いロボットに案内された古い工場で、マヤはその正体にたどり着きます。

 吉岡さん SFにしたのは、マヤをひとりで冒険させたかったからです。令和の日本の子どもがカカオを収穫するには、ガーナへ行くのに親の引率が必要だし、読者の頭には児童労働の問題もちらついてしまいそう。1千年後の未来を舞台にすれば、温暖化の影響で日本の近くでもカカオが育っているし、冒険は空飛ぶ乗り物やロボットが助けてくれるという設定で、いろんな問題を解消できました。

 マヤのファッションの参照元…

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