節目の大台に、ひっそりと到達した。
本拠・楽天モバイルパーク宮城であった6月13日の巨人戦。東北楽天ゴールデンイーグルスの酒居知史が、八回を無失点に抑え、通算291試合目で100ホールドを達成した。
「プロに入った時は、こんな記録を達成できるとは思っていなかったんで、びっくりしている」
そう振り返った後、周囲への感謝の思いを口にした。
「こうやって達成できたのも、歴代の監督、投手コーチが起用してくれたおかげですし、(球を)受けてくれたブルペンキャッチャー、たくさんの人に支えられてできた記録だなと、しみじみ思います」
試合途中の荒れたマウンドが本格的な仕事場となったのが、ロッテに在籍していたプロ3年目の2019年だった。
ホールドは同点で登板して1死以上を取って無失点に抑えた場合などにつく。
中継ぎの活躍度を示す、一つの勲章だ。
ただ、リードを守り切ってセーブ記録がつく守護神より、スポットライトは当たりにくい。むしろ、注目されるときは打たれたときが多い。
打者有利な状況でも腕を振り、本塁を踏ませずにベンチに戻ることが期待される厳しいポジションでもある。
「(注目度と責任の重さの)ギャップは日々感じながらやっている。でも、そこは嘆いてもしかたない。何かをきっかけにしないとイメージはなかなか変わりにくい」
「でも、チーム内ではそんなことはなく、存在意義を示してくれますし、やりがいをすごく感じながらできるので、モチベーションになっている」
身長178センチ、体重80キロの大柄とは言えない体に、誇りがにじむ。
20年から楽天に移籍し、けがなくプロ人生を過ごしてきたわけではない。軸足の右太ももを痛めて、納得できないシーズンを送ったときもある。昨季はチームがAクラス入りを争っていた夏の暑い盛りに登板数を減らし、やりきった感は乏しかった。
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「近年、周りのレベルがすごく高いし、そういった刺激を受けて、僕もこのままだと埋もれていくな、と向上心を持って、いろんなことに取り組もうと思いました。けがも経験して、どのようにすれば強くなっていくか、一つ勉強になった部分もあります」
今年、ひそかに周囲を驚かせたのは、31歳にして、進化し続けていることだ。
4月23日の日本ハム戦。延長十一回に登板した7球目だった。
本拠の楽天モバイルパーク宮城で自身初めて、150キロを計測したのだ。
「ここで出たのは初めて。オフにやってきたことが実っている」。すこし遠くを見やりながら振り返った。
このオフ、米・シアトル郊外…