拉致被害者・有本恵子さんの父明弘さんが亡くなり、政府が認定した未帰国の拉致被害者12人の親世代で生きているのは、横田めぐみさんの母・早紀江さん(89)だけとなった。早紀江さんは17日、川崎市で記者会見し「一生懸命訴えていたのに、恵子さんに会わせてあげられなかった。むなしく悔しい思い」と語った。
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明弘さんは、恵子さんが石岡亨さんらと北朝鮮で暮らしているという手紙が1988年に届いた後から、妻の嘉代子さんとともに政治家や外務省に働きかけるなど、恵子さんの救出を求めて独自に活動していた。
早紀江さんは97年2月にめぐみさん拉致疑惑について知り、3月に拉致被害者家族会が結成された際、有本さん夫妻とも会った。「こんなにたくさんの人が(北朝鮮に)連れて行かれていると知って、ともにがんばりましょうと励まし合った」と振り返る。
しかし、2002年に蓮池薫さん(67)ら5人が帰国して以降、被害者の帰国は実現していない。親の世代は高齢化が進み、20年に嘉代子さんが94歳で、早紀江さんの夫・横田滋さんが87歳で相次いで死去した。明弘さんは滋さんが亡くなった際、「ようがんばったのになあ」と早紀江さんを慰めたという。
家族会は今月16日に東京都内で支援団体「救う会」とともに決めた今年の運動方針で、「時間がない! 政府は親の世代が存命のうちに全拉致被害者の即時一括帰国を実現せよ!」と強調した。存命する「親の世代」とは明弘さんと早紀江さんの2人を指していたが、「いよいよ1人になってしまった」と早紀江さんは嘆いた。
きょうだい世代でも、21年…