2025年3月2日、ロンドンで開かれた首脳級会合で会議に臨む(左から)マクロン仏大統領、スターマー英首相、ウクライナのゼレンスキー大統領=ロイター

 ロシアの全面侵攻を受けるウクライナの停戦時に「安全の保証」を提供するため、欧州が中心となって派兵の議論が続いています。一方、防衛大学校の広瀬佳一教授(欧州安全保障)は欧州独自の有志連合では、ロシアを抑止できないと指摘します。欧州諸国が抱える安全保障上の課題について聞きました。

  • ウクライナ派兵で割れる欧州 首脳らの発言から読み解く各国の姿勢

 ――欧州では英仏を中心にウクライナへの派兵の議論が進んでいます。

 米国が関与しない限り、現時点では欧州独自の有志連合はロシアへの抑止にはなりません。

 現代戦ではISR(情報収集・警戒監視・偵察)が非常に重要ですが、欧州はこの能力が劣っています。

 地上軍派遣の前提になる空域の監視には早期警戒管制機(AWACS)などのシステムが必要ですが、英仏合わせて4機程度しかないとされ、不十分です。30機以上ある米国や10機以上ある北大西洋条約機構(NATO)に頼らざるを得ません。

 さらにロシア軍の動きを監視するのは軍事人工衛星からの情報ですが、米国は200基以上保有する一方、英国は6基、フランスも15基しかありません。

 また、軍隊は指揮統制システムに入れないと有効に動きません。有志連合が機能するには米国やNATOの指揮統制システムが必要です。

 これまでの有志連合の派遣は1990年代のボスニア紛争や2003年のイラク戦争、11年のリビア内戦への介入などがありましたが、いずれも米国が参加し、NATOや米国のシステムを使ってきました。

 スターマー英首相が有志連合のために米国の後ろ盾が必要だと言っているのは、ISRや指揮統制システムを提供してほしいということです。しかし、トランプ政権は支援するか明確にしていません。

 ――マクロン仏大統領はフラ…

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