舞台「ハムレット」に主演する片岡千之助

 歌舞伎の人間国宝である片岡仁左衛門さんを祖父に、女形として活躍する片岡孝太郎さんを父に持つ若手俳優、片岡千之助さん。映画「国宝」でも注目された、歌舞伎界の「御曹司」の一人です。

 主演する舞台「ハムレット」の開幕を前に、歌舞伎の家に生まれたがゆえの葛藤、そして近年、別のジャンルへの挑戦を続ける思いを語ってくれました。

舞台「ハムレット」に主演

 ――「ハムレット」は仁左衛門さんもかつて主演した作品です。オファーを受けたときはどう感じましたか。

 祖父の姿が最初に思い浮かびました。歌舞伎でいう「家の物」じゃないですが、祖父の当たり役の一つのような感じがしていて。いつかやりたいと思っていた役を25歳でいただけたのはうれしかったですね。

 ――仁左衛門さんは、どんな反応だったのでしょうか。

 一緒にご飯を食べているときに、「大変だぞ」とニヤニヤしながら言われました(笑)。

 セリフも歌舞伎にもないくらいの多さで、夜逃げをしたくなったという逸話があるくらい、祖父自身も苦しんだ演目だったそうです。舞台稽古などの映像を分けてくれたり、のどのケアの仕方を教えてくれたり。もちろん応援はしてくれながらも、とてつもなく心配しているんじゃないでしょうか。

 ――主人公の王子ハムレットは、日本でも多くの名優が演じてきた役です。千之助さんならではハムレットを、どう見せていきたいですか。

 僕自身は歌舞伎でいえば、立役(たちやく)なら二枚目、女形は全体的にこなしている印象を持たれていると思います。そのなかでも、「はかなさ」という要素が見えやすいと思うんです。

 だから「ハムレット」という悲劇でも、そうした部分を生かして、お客様に愛着を持ってほしいなと。お客様が応援したくなるようなハムレットを演じたいです。

「少し休ませてほしい」 祖父の答えは……

 ――昨年はNHK大河ドラマ「光る君へ」に出演するなど、最近は歌舞伎以外のフィールドで活躍している印象があります。

 歌舞伎に最後に出演したのは、2023年になります。その頃には、本当にいいお役をいただくようになって。自分なりに頑張ってはいながらも、モチベーションといただける役の大きさがつり合わなくなってきていたんです。

 もちろんありがたいと思って…

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