(10日、第107回全国高校野球選手権大会1回戦 北海7―10東海大熊本星翔)
九回2死。3点を追う北海。代打に指名されたのは新谷悠太捕手(3年)だった。
キャッチャーというポジションが好きだ。投手の考えと、自分の考えは、時に食い違う。そんなとき、サインでコミュニケーションを取り合い、バッテリーで正解を導く。「ただストライクを取るだけではなく、その過程も楽しい」と新谷捕手は笑顔で語る。
正捕手ではない。2年生の8月に左足を負傷。復帰は翌年の3月まで遅れた。この間に2年生が正捕手。「まだ自分が勝る部分があるのでは」という気持ちが拭えなかった。時間はかかったが、重要なのはチームの勝利だと切り替えた。
出場機会が減った分、代打で結果を残すことを意識してきた。打撃は好調。大舞台で出番が回ってきた。
「とにかく自分のスイングをしよう」
打球は三遊間を抜けた。土壇場の一打に甲子園が沸いた。
新谷捕手は、うまくいかないことも多かったという高校野球をこう振り返った。
「言葉に表しきれないくらい、良いことも悪いことも。本当に濃厚な3年間でした」