連載「もうひとつのやまゆり園」④
コピー用紙を貼り合わせて巨大な年表を作り、ひとりの女性の半生を浮かび上がらせる。そんな取り組みが、神奈川県立障害者施設「中井やまゆり園」(中井町)で進められている。
園の外部アドバイザーで、社会福祉法人に勤める羽生裕子さんと、就労移行支援や生活介護などの事業所の運営会社代表の高原浩さんが園に残された記録を調べ、女性の家族からも話を聞いて年表に落とし込んだ。
女性は現在60代。重度の知的障害があり、20歳のときに園に入った。1980年代のことだ。
園に入った当日、女性は納得できず、親を追いかけて帰ろうとした。その後も「お母さん(いつ)来る」「帰宅訓練はいつ」と、一時帰宅を心待ちにしていたという。
関連ページ やまゆり園事件
神奈川県は、七つある県立障害者施設のうちの四つに県の花の名を冠し、「やまゆり園」と名づけている。その一つ、津久井やまゆり園(相模原市)で2016年、入所者19人が殺害される事件が起きた。同園を調べる中で、中井やまゆり園でも虐待を含む不適切な支援が行われていたことが発覚。県立の施設で、なぜ障害者を「人間として見ない」支援が横行していたのか。「もうひとつのやまゆり園」を取材した。(連載「もうひとつのやまゆり園」(全7回)はこのページに掲載します)
入所時はふくよかな体形
身長164センチ、体重74キロとふくよかな体形だった。洋服が好きで母親がよく差し入れていた。一方、物を壊すことや対人トラブルを起こすこともあったという。
入所した当初は、園には牧歌…